お金を残すより、稼ぐ力を残す
「子どものために、できるだけお金を残してあげたい」
親なら、そう考えることがあると思います。
大学の学費。結婚するときの援助。家を買うときの頭金。
そして、できることなら財産も残してあげたい。
もちろん、それも子どもへの愛情の一つです。
でも、私は最近こう考えるようになりました。
子どもに1,000万円を残すことと、
子ども自身が1,000万円を作れる力を身につけること。
長い人生で考えたら、どちらが大きな財産になるのでしょうか。
今回は、ユダヤの伝統に残されている 「仕事」「自立」「分ける」 という考え方から、子どものお金教育について考えてみたいと思います。
最初に大切なこと
「ユダヤ人はみんな同じお金教育をしている」という話ではありません。ユダヤ社会にも、さまざまな家庭や価値観があります。
この記事では、タルムードやユダヤ思想に残されている伝統的な考え方の一部を取り上げ、現代の家庭教育にどう生かせるかを考えていきます。
1.親の役割は「お金を残すこと」だけではない
ユダヤ教の重要な文献であるタルムードには、親が子どもに対して果たす役割について興味深い記述があります。そこでは、父親には子どもに学びを教えることなどと並んで、「職業・技能を教える」ことが求められる、という議論があります。
さらに、子どもに職業を教えないことについて、非常に強い表現を使ってその重要性を説く議論もあります。その背景にあるのは、次のような考え方です。
親は子どもを養うだけではなく、
将来自分で生活できる力も身につけさせる。
これは、現代の子育てにも通じるものがあるのではないでしょうか。
2.魚を渡すのではなく、魚を捕れる人にする
子どもが困ったときにお金を渡す。もちろん、必要なこともあります。
でも、毎回親がお金を出して問題を解決していたらどうでしょう。
子どもは「困ったら誰かが助けてくれる」ということは学ぶかもしれません。
しかし、「どうすれば自分で解決できるのか」を学ぶ機会を失ってしまう可能性があります。
「お金を与えること」と
「お金を作れるようにすること」は違う。
親が一生懸命働いて1,000万円残したとしても、その1,000万円を使い切れば終わりです。
しかし、次のような力を身につけていれば、その子は何度でも自分の力で立ち上がることができます。
💡 働く力
💡 考える力
💡 商売する力
💡 お金を管理する力
💡 投資する力
💡 人と協力する力
3.「自立させる援助」という考え方
この考え方は、子育てだけではありません。12世紀のユダヤ思想家マイモニデスは、困っている人への援助について複数の段階を示しました。
その中で非常に高く評価されたのは、単純にお金を渡すことだけではありません。
・贈り物をする
・お金を貸す
・一緒に事業をする
・仕事を見つける
こうした方法を通じて、
その人が他人から援助を受けなくても
生活できる状態にする。
私はこの考え方を読んで、子育てにも非常に通じるものがあると思いました。
子どもが転ばないように、一生親が支え続ける。
それが本当の優しさなのでしょうか。
転んでも、自分で立ち上がれる力を身につけさせる。
こちらの方が、長い人生では大きな助けになるのではないでしょうか。
4.お金の教育は「稼ぐ」だけではない
ここでもう一つ、とても大切な考え方があります。
ユダヤの伝統には、「ツェダカ」という考えがあります。
一般には「慈善」と訳されることもありますが、その背景には「正義」「公正」といった考えがあります。つまり、「余ったお金があれば、かわいそうな人にあげましょう」というだけではありません。
自分が持っているものの一部を、
社会の中で分かち合う。
そこまで含めて、お金との付き合い方を考えます。
お金の教育というと、まず次の3つを思い浮かべる人が多いと思います。
稼ぐ。
貯める。
増やす。
でも、お金との付き合い方はそれだけではありません。
使う。
分ける。
この2つまで含めて考えることで、お金は単に「増やすもの」ではなく、人生や社会とどう関わるかを考える道具にもなります。
5.「お金持ちになる方法」だけ教えても足りない
私は、子どもへのお金教育で「どうすればお金持ちになれるか」だけを教えるのでは、少し足りないと思っています。
お金は人生を豊かにしてくれる、とても便利な道具です。
でも、本当に大切なのは次のようなことまで考えることだと思います。
何のために稼ぐのか。
何に使うのか。
どれだけ残すのか。
誰かのために使うのか。
ここまで考えられて初めて、お金を自分でコントロールできる人になるのだと思います。
例えば、子どもに1,000円を渡したとします。全部使ってもいいし、全部貯金してもいい。
でも、そこで一緒に考えてみます。
「100円は人のために使ってみる?」
「300円は将来欲しいもののために取っておく?」
「残りは今日好きなことに使う?」
こうすると1,000円が、単なるお小遣いではなく、お金について考える教材になります。
6.家庭でできる「3つのお金箱」
私なら、小さな子どもには非常に単純な仕組みから始めます。
例えば、お金を3つに分ける方法です。
① 使うお金
自分の好きなものを買うためのお金です。
ここでは、失敗してもいいと思います。
欲しくなって全部使ってしまう。
そして次の日に、
「あれを買わなければよかった」
と思う。
それも立派なお金の勉強です。
100円の失敗を子どものうちに経験することは、
大人になって100万円の失敗をするより、はるかに良いと思います。
② 貯めるお金
今欲しいものではなく、少し先に欲しいもののためのお金です。
500円のおもちゃを我慢して、3,000円のものを買う。
今使わなければ、将来もっと大きな選択ができる。
こうした経験から、「待つこと」や「先のために残すこと」を学べます。
③ 人のために使うお金
家族でもいい。友達でもいい。寄付でもいい。
誰かの喜ぶことに使ってみる。
お金は、自分の欲しいものを買うだけの道具ではない。
そんな経験も、子どもの頃から少しずつ積み重ねられると思います。
7.さらに大切なのが「自分で稼ぐ経験」
そして、ある程度の年齢になったら、私は4つ目を加えたいと思います。
「自分で稼ぐ」
お金をもらうことと、お金を稼ぐことは、まったく違います。
・家族の仕事を手伝う
・何かを作る
・不要になったものを売る
・誰かの役に立つ
・小さなサービスを考える
年齢に応じて方法はいくらでもあります。
大切なのは金額ではありません。100円でもいいのです。
自分が何かをしたことで誰かが喜んでくれて、その対価としてお金を受け取る。
この経験は、とても大きいと思います。
お金は「誰かからもらうもの」ではなく、
「価値を提供した結果として受け取るもの」。
8.親が残せる本当の財産とは何だろう
親としては、子どもに苦労してほしくありません。
だから、お金を残したい。家を残したい。財産を残したい。そう思います。
でも、どれだけ財産を残しても、それを管理する力がなければ失う可能性があります。
反対に、大きな財産を残せなかったとしても、自分で考え、働き、価値を作り、お金を管理し、困ったときには立て直せる力があれば、その子は自分で人生を作っていけます。
「いくら残すか」だけではなく、
「何を残すか」。
9.お金を残すより、稼ぐ力を残す
ユダヤの伝統に残る考えを見ていくと、一つ共通して見えてくるものがあります。
それは「自立」です。
子どもに職業を教える。
困っている人には、ただお金を渡すだけではなく、自立できるよう支える。
持っているものの一部を、他者と分かち合う。
これらを現代の家庭教育に置き換えると、お金教育とは、
「どうやってお金持ちになるか」を教えることだけではない。
自分で稼ぐ。自分で管理する。自分で使う。自分で貯める。人のためにも使う。
そして、困ったときには自分で立ち直る。
そこまで身につけて初めて、
「お金に自立した人」になるのではないでしょうか。
今日からできること
子どもに難しい金融教育をする必要はありません。
まずは100円でも1,000円でもいい。一緒に考えてみることから始めればいいと思います。
「全部使う?」
「少し貯めてみる?」
「誰かのためにも使ってみる?」
「どうすれば次のお金を自分で作れるだろう?」
こうした会話そのものが、子どもにとって最初のお金教育になります。
最後に、今回私が一番大切だと思ったことを一つだけ。
子どもに1,000万円残すことより、
自分で1,000万円を作れる力を残す。
財産は、なくなることがあります。
でも、自分で財産を作れる力は、その子の一生を支えてくれる財産になるのではないでしょうか。
参考
・Sefaria「Kiddushin 29a」
・Sefaria「Mishneh Torah, Gifts to the Poor 10:7」
・My Jewish Learning「Tzedakah for Kids」
ドルえもんです😊
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